湘南の家づくり〜建築塾❶漆喰

○家づくりに本当に必要な自然由来の建材とは?
今回のテーマは、無垢の木材などと並び、自然素材の代名詞的な扱いにもなっている『漆喰』ですが、そこには漆喰とは名ばかりの別物が多く市場を席巻しているのも事実です。本当で本物の漆喰とは何か?をご説明をしたいと思います。

○そもそも漆喰とは?
 日本での原始的な漆喰は縄文時代からあったとされており、世界最古の例は5千年前のエジプトだそうです。日本でも古くから、その性能を活かした使い方をしています。漆喰の作り方を簡単に説明しますと、主原料である消石灰に、海藻糊(海草を炊き抽出したもの)を粘着剤として入れ、割れを防ぐための「つなぎ」である麻などの繊維「スサ」を加え、これらを水で練り上げ作ります。皆さんも一度は、城や社寺仏閣、蔵などの外壁などで見た事があると思いますが、あの白いスベスベした壁が本漆喰と言われるものです。

○漆喰のつくり方
 前号でもお話をさせて頂きましたが、本漆喰を作る際に使用する糊(海草)の作用は材と材とをつなぎ、固着や接着をさせるための役割ではなく、保水と粘り気を出すことを目的としています。石灰のままでは塗りにくく、塗ったものがすぐに乾いてしまっては綺麗に仕上がらないので、材に保水、粘りを出すことで流動性を最適にし、施工性を良くし、仕上げの精度を上げるために混入されます。そこを間違えてしまうと、糊=接着剤として捉えてしまい、樹脂などの接着剤を混入させるという商品さえ存在するようです。それでは漆喰とはいえない別物の材になってします。
 ここで大前提として書いておきますが、本来、本漆喰は左官職人が使用に応じて自らが調合して作るものであって、既調合品(既製品)で買ってくる物ではありません。製品化されている漆喰と名乗って販売されている商品の中には、ナイロンやガラスなどの化学繊維を混入した製品や合成樹脂(化学物質)や化学糊を使用している物、樹脂顔料を混ぜて色を付けた商品などがあります。DIYをうたい文句に「ビニールクロスの上から塗れる漆喰」「石膏ボードに直に塗れる漆喰」「ローラーで塗れる漆喰」「カラー漆喰」などの商品から「消石灰を使用していない漆喰」などはもはや漆喰ではありません。バケツ一杯の材にスプーン一杯の消石灰が入っているだけで漆喰を名乗るような物まで存在します。それらは本来の漆喰と比べ強度も劣り、性能や性質も大きく異なります。

○漆喰が固まるメカニズム
 皆様の身近にあるセメント(モルタル)やコンクリートなどは、水と混ぜ合せる事で硬化をはじめる性能を持ちます。それを水硬性と言いますが、漆喰は、水と混ぜ合わせても硬化はしません。漆喰(石灰)を塗ると水が蒸発した後、ほぼ石灰の固まりになります。漆喰(石灰)は水で硬化するのではなく、空気中のCo2(二酸化炭素)を吸いながら、長い時間をかけて硬化(石化)するのです。それを気硬性と言います。
 石化とありますが、そもそも漆喰を作る際の主材料である「消石灰」※<石灰岩を高温で焼くと、生石灰が得られ、生石灰に水を加えると消石灰が作られます>は、もとは石灰岩といわれる、海底に堆積した貝殻・珊瑚礁が岩石になった物です。日本全国の広範囲で採掘される、国内、唯一の鉱物資源と言っても過言ではない材でもあります。
 また、石灰は石灰岩などの鉱物系とは違い、動物系といわれる貝殻や珊瑚などからも精製が可能です。海に囲まれた日本ならではの材を活かした、先人の知恵です。石灰自体はアルカリ性の性質を持ち、とても長い時間をかけて、空気中の二酸化炭素と化学反応を行い、中性化を起こし、もとの石灰岩…と言うより、貝殻に戻ろうとします。
 その中性化の速度は厚さ1mmに対して、約10年とも言われています。通常、一般的な本漆喰は3mm程度を塗っていきます。そうすると約30年間、石化するまで性能を発揮してくれる計算になります。ところがローラーで仕上げられる漆器と銘うっている商品の塗り厚さは0.3mmすらないのでは? これでは材の性質が仮に同じだとしても、本来の性能とはほど遠いですね。

○漆喰の性能に応じた使い方
 近代建築において、工業生産品である新建材が多く使われるようになってから起きた、シックハウス症候群の主たるものとされるホルムアルデヒドなどの化学物質を吸着分解する機能があるものとして、漆喰は多くの住宅建築で使われるようになってきました。漆喰はアルカリ性であることから、抗菌や防カビなどの効果も期待がもてること。何か良いこと尽くめのような本漆喰ではありますが、全てに対して、万能な訳ではありません。
 漆喰は、土の様に固まっても水を混ぜるともとに戻ることもなく、コンクリートの様にいったん固まるとそのままというわけでもありません。弱くもなく、硬くもない、まるで土とコンクリートの中間のような材とも言えます。漆喰は薄く塗っても、硬度がある為、防火性が高く、その性質からか、昔からお城や蔵などの外壁に塗り、火災から命や家財を守る役割もありました。しかし、土壁(土)とは違い、蓄熱性(熱を蓄える性能)は劣るため、城や蔵などの室内側に塗る事例は見たことがありません。土壁が普通に住宅建築に使われていた数十年前は、土の表面を風雨や衝撃から守るために、土壁の上から本漆喰で仕上げることも多かったと思いますが、こと現代の住宅の居室の仕上げを本漆喰だけで仕上げると、蓄熱性に劣り、硬度がある故に室内の音が反響してしまうことも。本漆喰で所構わず仕上げてしまっては、想定している住環境が得られないこともあるのでは? と筆者は考えています。

 自然由来の素材だから万能な訳ではありません。人工では作りえない、自然が育んだ材だからこそ、知りえない大きなメリットもあり、扱う人間によってはデメリットもあるのです。商い上の宣伝広告やメリットだらけのカタログなどに惑わされずに、少しだけ自然材について学んでみてはいかがでしょうか?
次回は、漆喰の種類と使用法についてお話をしたいと思います。

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❶貝灰◎蛎や蛤や赤貝の貝殻を焼き、消和して得る消石灰


❷焼成◎石灰石を焼成炉の中で900~1400℃の高温で焼き生石灰が作られます。生石灰に水を反応させ、消石灰が作られます


❸石灰◎生石灰と消石灰の総称で呼ばれることが多く、建築材として利用する他、食品添加物、鉄鋼用など我々の生活に密着した材であり、国内で自給自足できる数少ない貴重な資源の一つです