湘南の家づくり〜建築塾 ❷本物の漆喰とは何か?

無垢の木材などと並び、自然素材の代名詞的な扱いにもなっている『漆喰』です。
巷には漆喰とは名ばかりの別物が多く市場を席巻しているのも事実です。
本物の漆喰とは何か? 

○自然素材=漆喰?
 『自然素材』・・・ここ数年で建築業界内だけでなく、一般的にもメディアや広告を通じて、見聞きすることが多い言葉ですが、自然素材とは文字通り、自然が育んだ素材を建築材として使うことを指します。一種の流行なのか否か、言葉だけが先行してしまい、『自然素材』とは一体何なのか? 悲しいかな、それは一般の方々だけでなく、専門の造り手である建築士や建設会社、職人達でさえも良く理解ができていないのが現実です。
 余談ですが、私共Y’sではお客様に対し、漆喰などの材に関しては、自然素材という言葉は使わないことにしています。本来の自然素材とは、大地が育んだ自然のままの状態で使うことのできる無垢の木材などを指し、自然が育んだ素材を人の手で加工して使用することが可能な、和紙や漆喰材などに関しては、自然由来の材として言葉の使い分けをしています。何故、そこまで言い方にすらこだわるのかというと、それはY’sで扱う漆喰は、本当に自然由来だけで作る(加工)材であり、そこに化学物質などが混入されている、世に氾濫している名ばかりの自然素材と区別して頂きたいとの想いもあるのです。

○漆喰とは何か?
 漆喰・・・家づくりに携わらなくとも、一度は見聞きしたことがあると思いますが、一般的なイメージとしては、お城やお寺、神社などの建築物の白い壁を想い浮かべるのではないでしょうか? 数十年以上前に多く建てられた住宅の内外の壁など、あらゆる箇所で漆喰は使われてきましたが、何故、また漆喰が現代でも注目されてきたのでしょうか。そこを解明するために、まずは漆喰についてご説明したいと思います。
 そもそも漆喰はどの様な材なのでしょうか? 漆喰を作る原材料や作り方をご存知の方は少ないのではないでしょうか? 私共、Y’sでは、定期的に職人から建築士、建設会社などのプロの専門家向け技術講習で講師をする機会があるのですが、そこに集まる建築の専門家の人達でも、漆喰の組成や製作方法を理解している方が少ないのです。悲しいかな、ご高齢の職人や建設会社の社長さん達ですら、「漆喰は店で売っている」「袋から出して、水を混ぜて作る」など、プロではない一般の方々のような発言をし、驚いたのを覚えています。

○漆喰は海からの贈り物!
 そもそも本物の漆喰は、お店には売っていませんし、まして袋にすら入っていません。皆様がイメージする表面がツルツルで白い壁で使われる漆喰は、本漆喰とも呼ばれ、本来は、職人の手で作られる物なのです。本漆喰を作るための材は、基本的に石灰、藁や麻の苆(スサ)、紙・海草糊(のり)・角又(ツノマタ)などの三種だけで作られます。
 まず石灰ですが、正確には消石灰という石灰を使用します。ここでは割愛しますが、日本国内で多く採掘が可能な石灰岩、貝殻などから作る石灰など、石灰といっても精製する材も色々と分類されます。
 二つ目の材料は、乾燥させた藁や麻などの繊維である原材料を用途に応じて細かく切断した物を用います。
 そして三つ目の材はとても重要な海草糊です。布海苔、銀杏草、角叉などの海草が使われます。これらの海草は主に東北以北で多く採取され、海草をそのまま使うのではなく、時間をかけて乾燥したものを使用します。先の震災では、多くの海草が流されてしまい新たに時間をかけて良質な海草が採れたとしても、乾燥まで数年の歳月がかかるため、良質な糊の入手が困難で確保が危ぶまれています。
 それらの海草を乾燥させ糊をとして使用するために、海草を鍋や釜などで煮るのです。私達はそれを煮るではなく『炊く』という言葉を用いて、本漆喰=炊き糊漆喰と呼んでいます。

○漆喰の誤解?
 何故、三つ目の材である海草糊(ツノマタなど)が重要なのでしょうか。本漆喰を作る際に使用する糊は、材と材をつなぎ固着させる役割の糊ではなく、海草糊=接着剤ではありません。ここに大きな誤解があり、「本物と似て非なる物」の大きな違いがあります。海草糊は接着のためではなく、保水と粘り気を出すことを目的としています。石灰のままでは塗りにくく、塗ったものがすぐに乾いてしまっては綺麗に仕上がらないので、材に保水、粘りを出すことによって流動性を最適にし、施工、仕上げのために混入されます。
 そこを勘違いしてしまうと、糊=接着剤として捉えてしまい、樹脂などの接着剤だけでなく、なかには人に安全だからといって、食用に用いられるデンプン糊などを混入させる商品もあるそうです。これではまったく漆喰とはいえない材になってしますのです。
それを知って頂くために、次号では漆喰の硬化のメカニズムについて話を続けたいと思います。

 

漆喰は(写真上から)角又(つのまた)、消石灰、麻スサの3種の自然素材からできる


角又(つのまた)は海藻を乾燥さえたものを炊いて混ぜる


角又の入手が困難になってきた昨今では、粉末海藻といった商品もあります